春眠不覚暁
桜も満開となり季節はすっかり春の様相を醸し出していた。
一年の内で過ごしやすい部類に入る季節だろう。今日も日課のように部室へと向かう。
こんな日には草原で横になった方がよっぽど有意義であろうに・・・。
ノックをするが反応が無い。誰も居ないのか?
ドアを開けると窓辺にはいつもの様に読書に耽る少女・・・。長門が居た。
ただいつもと違うのは本を手にしたまま体が前後に揺れている事だ。
どうやら読書の途中で睡魔に襲われてしまったようだ。この陽気だ無理も無い。
授業の大半を眠って過ごしても寝足りないぐらいだ。
宇宙人に作られた有機生命体云々でも疲れる事があるんだろう。休息も必要さ。
俺はそう思うと静かにドアを閉めた。一人では特にすることも無い。
俺はふと興味に駈られ長門の近くに椅子を置いて座った。
春の陽光に照らされる純白の肌。桜にも負けない桃色の唇。淡い輝きを放つ髪の毛。
非常に魅力的だ。・・・。って何を考えているんだ。
不思議といつまでも見つめていたい風景。俺は暫く見つめ続ける事にした。
普段なら直に気付かれてしまいじっくりと見つめる事が出来ないからな・・・。
こういう時にでも目に焼き付けておくべきだ。・・・・・・。
いつの間にかまどろんでいた様だ・・・。俺はゆっくりと目を開けた。
そこには僅か数センチという所に長門の顔があった。うぉっ!思わず後ろに倒れそうになる。
「な、長門いつから起きてたんだ?」
「・・・。ついさっき。貴方が側にいるのに気付いてよく寝ているようだったから近くで見つめていた」
抑揚も無く淡々と告げる。
「長門悪いな。俺もお前が寝ているところを見つめていたんだ。嫌だったら謝るよ」
「・・・。嫌ではない・・・。寧ろ・・・」急に口ごもる。そして小さな声だが確かに分るように口を開いた。
「貴方にはもっと私を見て欲しい・・・」それだけ言うと長門は帰る準備を始めた。
俺はかなり動揺しつつも長門に続いた。部室を出る直前。長門に話しかける。
「あー。さっきのってつまり・・・」「答えは自分で考えて・・・」少し子悪魔的な雰囲気を漂わせていた・・・。部室を出るとそこには・・・。「二人で随分とお楽しみだったようね・・・」
ハルヒ・・・・!いつの間に・・・。朝比奈さんはどこかあたふたしている。・・・古泉が居ない。
ひょっとしたら閉鎖空間の方に行ったのかもしれない。
「キョン。怒らないから一部始終を話しなさい・・・」やれやれ・・・。
少しはこの幸せを長く楽しみたかったぜ・・・。
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