2007年7月7日土曜日

長編14

「助けて欲しい」そう書かれたメールが届いた。
相手はあろう事か長門だ。長門が助けて欲しい事など想像がつかない。
相当困った自体なんだろうが何度も長門には助けられている。断る理由なんてないさ。
それに俺たちが力をあわせればどんな問題でも解決できる気がする。
今までだってそうだった。今回もそうだと思ったのだが・・・・・・。

もうすっかり慣れた道のりを飛ばし長門のマンションへ向かう。
肌を通り抜ける夜の風が涼しい。マンションに着き長門の部屋へと向かう。
「俺だ。入るぞ?」確認を取る。「入って」返答を得た俺は部屋に足を入れる。
テーブルに向かい合わせに座る。長門が淹れてくれたお茶を飲む。
俺がお茶を飲んだのを確認したかのように長門は話を切り出した。
「単刀直入に言う。私は記憶を失った」
・・・・・・?は?俺は思わず口を開けてしまった。
「分らないのも無理はない。今の私の記憶に有るのは『長門有希』という名前だけ。これからどうすればいいか困っている」
一体どういうことだ?記憶喪失?長門に限ってそんな・・・・・・。
そうだ、名前しか覚えて無いというならどうして俺を呼んだんだ?
「電話の着信、送信履歴を調べた。その結果あなたの名前が一番多かった。あなたを私は信頼していたという証拠」
参ったね。確かに長門とはよく連絡をしていた。信頼関係・・・・・・。
無かったと言えば嘘になる。それにしても・・・・・・。
「記憶がないって言うが本当に何も覚えてないのか?
今からちょっと確認してみるがいいか?」お前はナントカ思念体に作られたんだよな?「・・・・・・」
お前はSOS団とかいう変な団体の一員だよな?「・・・・・・」


他にもSOS団が関わった事件の事を聞いてみたが全滅だった。何も覚えていない。
どうやら事実らしい。尤も長門は嘘なんてつかないだろうが・・・・・・。
「幸い知識などは失っていない。学校生活は明日からも送れる」そうか・・・・・。
それはいいとしても。SOS団に顔を出すのは不味いな。ハルヒが何をしでかすか分ったもんじゃない。取りあえず明日古泉辺りにでも相談する事にするか。
明日は授業が終わったら家に帰ってじっとしてればいいことを伝えると長門は静かに頷いた。
その顔からは最近になって読み取れるようになった感情が消えていた。
本当に忘れてしまったのか・・・・・・?その日は取りあえず解散となった。
明日から一体どうなっちまうんだ?俺はハルヒに長門が活動に出られない理由を考えながら次の日を迎える事になった。



翌日。日課となったハイキングコースも慣れたものだ。
クラスに着き自分の席に座ると早速ハルヒに絡まれた。「キョン! 悪いんだけどSOS団の活動は私暫く出られないから!私がいなくてもしっかりやりなさいよ!」
そりゃ好都合だ。長門が出れない言い訳を考える手間が省けたぜ。
という事は古泉、朝比奈さん、俺の三人か・・・・・・。何かいいアイディアが見つかればいいんだが。

放課後の部室。朝比奈さんの生着替えを目撃しないようにノック。
中から「ど~ぞ~」と声が返ってくる。俺は安心感を覚え部室へ踏み入る。
中には既に二人が揃っていた。早速古泉に事情を説明してみるか。

「ふむ、長門さんが記憶喪失ですか。困ったものですね」ああ本当だぜ。
名前以外覚えていないとか相当なものだぜ。「何が原因なのか分りませんが即急に記憶を取り戻させるべきですね」
お前の機関の力で何とかならないのか?
「機関といっても万能じゃありません。普通の人間の記憶喪失なら兎も角長門さんの場合は・・・・・・」
お手上げかよ・・・・・・。「取りあえず涼宮さんが暫く来れない内になんとかしなければなりませんね」同感だな。取りあえず今日も長門に会いに行くか・・・・・・。

再び長門の部屋に入った俺は古泉と話したが無駄だった事を告げてみた。
「・・・・・・古泉って誰?」ああ、そうか今の長門には分らないか。軽く説明してやる事にする。
ニヤケ面はいけ好かないが頼りになる奴さ。
説明し終わった後、長門は突然俺の腕にしがみ付いて来た。「ど、どうしたんだ長門!」
「私は怖い・・・・・・これ以上忘れてしまいそうなのが怖い・・・・・・貴方は最後まで側に居てくれる?」
半分涙目になって黒真珠のように輝く瞳で俺を見つめている。
「大丈夫だ。俺は何があっても側にいる。それにこれ以上忘れると決まったわけじゃない。きっと記憶は戻る。だから泣かないでくれ」そう言うと安心したのか俺から少し離れた。
静かになった部屋にチャイムの音が響いた。
?一体誰だ?俺は覗いて見た。そこに居たのは・・・・・・。



「長門」と「俺」だった。何が起きている?
というか誰だ?俺達はここに居る。じゃあ目の前の「俺達」は?
頭の思考をフル回転させていると声を発した。
「あー。ひょっとしたら見当がつくかも知れんが・・・・・・俺たちは未来からやってきた。伝えなきゃならん事がある」なるほど・・・・・そういうことか。
俺は長門に事情を説明し「二人」を部屋に上げた。
「ズバリ、長門の事で困ってるんだろ?」ああ、その通りなんだ。
「その原因なんだがな・・・・・・長門説明してやってくれ」「長門」が口を開く。
「過去の私が記憶を失ったのは『エラー』が原因。その原因は・・・・・・貴方」
何だって?俺が原因?俺が何をした?
「貴方は忘れている。私と最後に交わした会話を」忘れている?俺が?何を・・・・・・?
そもそも記憶を失う前の長門と最後に会話したのは何時だ?
頭の中に靄がかかってるかのように思い出せない。
「貴方にはそれを思い出してもらうため私達はやってきた」
「という訳なんだ。よく分からないかもしれないが事実なんだ」
ちょっと質問なんだがそっちの「長門」は記憶はあるんだよな?
なら、ここで俺が何かをすれば記憶は戻るんだな?「・・・・・・戻る。その方法は・・・・・・」



さて、俺はその方法を実行する為に数日前に飛ばされたわけだ。
まさか過去に来る事になるとは思わなかったが・・・・・・。
未来の長門は時空遡行も出来るようになったんだな。
にしても俺のあの一言が原因だったんだな・・・・・・。たった一言で随分苦しめちまったんだな。
元に戻ったら謝るぜ。俺は時間を計り電話をする。
「長門か?意味が分らないかもしれないが聞いてくれ。この後俺から電話があって俺はお前に俺の願望を言うはずだ。それは忘れてしまって良い。抱え込む必要はないんだ。未来から来た俺の伝言だ。分ってくれたか?」
「分った・・・・・・」と呟いたのを確認すると俺は安心する。別れを告げると俺は元の日に戻った。
そこには記憶が戻った・・・・・・。というより記憶を失ってない長門がいた。
こうして俺が引き金となった事件は幕を閉じた。
俺が何を言ったかって?「もう一度消失の時の様な笑顔が見たい」って言ってしまったのさ。
それが処理できないエラーになったそうだ。詳しい事は分らない。
俺はありのままの長門を愛する事にする。それだけだ。