「背中越しのセンチメンタル」
俺は取りあえず急いでいた。
何でかって?長門から「緊急事態、なるべく早く家に来て」と言う内容のメールが来たからだ。
「何だか分らないが、すぐ行くから待っててくれ。」
そう返信して長門のマンションに向かっているわけだ。自転車を過去最高速度で飛ばしたどり着いた。インターホンを鳴らす。「入って」俺は7Fへと足を速める。
「長門ー。着いたぞー。」反応が無い。ノブを回してみる。鍵はかかって無かったようだ。
部屋の中に入ると長門が背中を丸めて蹲っていた。
「お、おい! どうしたんだ長門! どこか悪いのか?」思わず声をかける。
答えの代わりに聞こえてきたのは・・・・・・。「ひっく」・・・・・・?「ひっく」
これはひょっとして・・・・・?シャックリ?
「先ほどから、ひっく、呼吸系等がひっく、異常動作をおこしてひっく、いるよう。 何か対処ひっく、方法を教えて欲しいひっく。」俺は取りあえず驚いていた。
長門でもシャックリなんて出るんだなという目の前の事実。
滅多に見れる光景じゃないなと想いつつも対処方法を教える事にする。
「そうだな・・・・・。取りあえず水を一気に飲むとかだな」
「分った。」ひっくと喉を鳴らしながら台所へ消える。水を飲んでいるようだ。ひっく。
「駄目。止まらないようひっく。」「駄目だったか・・・。後はそうだなぁ・・・・」
思いっきり驚かせるというのも有るがどうやったら長門が驚くのかその方が疑問である。
思いついたのはちょっと恥ずかしい方法だ。「背中をさすると治るとかもあったな・・・・」
「ではひっく、 それをお願い」嫌じゃないのか?と聞こうとしたが長門に頼まれては断れない。
「じゃ、じゃあさするから後ろを向いてくれ」俺に背中を向ける長門。小さな背中が愛しい・・・・。
ってこんな事を考えてる場合じゃないな。さすり。さすり。さすり。・・・・・・・・ひっく。
ひっく。ひっく。どうやら頑固なシャックリのようだ・・・・。
どれ位の時間が過ぎただろうか。
俺は他に止める方法も思いつかずひたすら長門の背中をさすり続けた。
長門は長門でシャックリに苦しんでいるようだ。
このまま止まらなかったらどうなるんだろうななんて考えが過ぎり始めた頃。
「大丈夫。もう呼吸系等の異常は治まったよう」お 本当だ。止まったみたいだな。
「止まったのは貴方のお陰。感謝する。」お礼を言われ照れる。
「いや、お礼はいいさ。誰だってシャックリは辛い。でも必ず止まるものだ」
それに長門の背中をさすり続けるなんて貴重な体験だしな。
「もういい時間。夕飯を作るから食べていって欲しい」
長門はそういうと俺の答えも待たずして台所へと消えた。
今日はいろんな意味で貴重な体験だなと想いつつ俺は長門と食べる食事へと思いを馳せた。
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