2007年6月20日水曜日

長編13

徹夜

今日は体調が悪い……。
普段なら睡眠時に体のメンテナンスを行うはずが 昨日は読書に夢中になり徹夜をしてしまった。
……迂闊。 休むという選択肢もあるが休むと彼にいらぬ心配をかける。
頑張って登校する事にする。
学校前の坂道。 彼が辛いといっていた気持ちが今日は分る。 必死に長い坂を登る。
もうちょっと……あと少し…… 次の瞬間 目の前が真っ白になった。


どうやら私は倒れてしまったらしい。 私は保健室のベッドに横たわっていた。
「お、気づいたか。よかったぜ」 私は自分の感覚情報を疑った。 確かに彼が居た。
「まだ頭すっきりしないのか?ボーッとしてるが?」 彼が心配している。何か答えなくては。
「大丈夫、心配しないで。もう平気」 私は上半身を起き上がらせる。
「びっくりしたぜ。坂道で声をかけようとしたら行き成り倒れるから……」
やはり私は倒れてしまったよう。
「慌てて保健室まで担ぎ込んだんだ。中々目を覚まさないもんだから心配したぞ。何かあったのか?」 ちょっと恥ずかしいが正直に話す事にする。 彼に嘘はつきたくない。
「なるほどな。長門らしいというか……いやいい意味でな。 でも出来ればこれからはもっと気をつけてくれよ?俺凄く心配したんだからな」 私は頷く。
そしてやっと気づいた太陽が傾きかけてる事に。
「もしかして授業……」 「あー。長門が心配な余り忘れてたぜ……まぁ気にするな」
とても嬉しい。私が起きるまで側にいてくれた。 それだけで幸せ。
「どうした?嬉しそうだが」 顔に出てしまったよう。迂闊。
「……何でもない」 彼は心配だからという理由で家まで付いてきてくれた。
たまには体調の悪いのもいいかもしれない。 そう思えた。

2007年5月9日水曜日

長編12

勿忘草の想い


あの事件から一年。私の中のエラーが原因で引き起こされてしまった事件……
解決後彼は言ってくれた。「お前が居なくなったら何としてでも取り戻しにいく」
私はとても嬉しかった……迷惑をかけてしまった私を。彼は必要としてくれた。
あれからの一年様々な事があった。私が居なくなることは無く比較的穏やかに過ぎた日々。
これからもそんな日々が続いていく……そう思っていた。あの指令が来るまでは……
今日も私は部室に一番で入る。最早これは当たり前と化した光景。
私は彼を待っていた。告げなくてはいけない事がある……
暫く時が流れ、響くノックの音。無言で答える私。これも日常。
入ってきた彼に視線を移す。「長門だけか……」
私は指定席から立ち上がると彼に手渡した。「……貸す」少し驚いている彼。
「……忘れないで」そう告げて私は元の場所に戻った。
これでいい。これでいいの……そう言い聞かせて。


その日は特に変った事も無く活動が終わった。しいて言うなら長門から本を借りた事ぐらいか。
どこか様子がおかしかった気がするが。
特にする事も無かった夜。俺は本を少しずつ読み始めた。
……。ある程度読み進めたとき本から栞が落ちた。俺はそれを拾うと気付いた。
「勿忘草か」その栞には勿忘草が印されていた。
イメージ的に長門にはぴったりな花だ。あいつもこうゆうのに興味があったんだな。
そんな事を思うと俺は今日の読書を終え眠りに付いた……。


その夜私は最後となる任務を遂行しようとしていた。
内容は彼の記憶からの私の消去。指令を受け取った時は何故?という想いが過ぎった。
回避はできないのか?拒否はできないのか?
私の想いは思念体には届かなかった・・・。
私に出来た事は彼にせめて忘れないで欲しいという想いを告げるだけ。
……。楽しかった思い出が胸を過ぎる。
私はこみ上げる想いを押し込め……最後の情報操作をした……

あくる日通学路で彼を見つける。胸が痛い……この想いは何なんだろう……
「おはよう。キョン」後ろから彼を呼ぶ声。彼が振り向きこちらを見る。
彼は私には気付かず……「国木田か。珍しいな」彼は友人と合流しまた通学路を進む。
私は……

日の暮れた放課後、私は部室へと向かう。恐らくもう誰も居ないであろうその部屋へと。
部室の前に来た時ドアから明かりが漏れている事に気付く。
私は一瞬彼が居る光景を思い浮かべ勢い良くドアを開けた。
・・・・・・。分っていた。彼が居るはずは無いと。さっきのはノイズ……
部室に居たのは 喜緑江美里だった。「もしかして彼かと思いました?」
「スキャンすれば誰が居るかは分る。貴方に用は無い」
そう告げ指定席へと向かおうとした時……腕をつかまれ抱きしめられた。
「ここなら人目は無いし好きにすればいいのよ」その言葉で私は堪えていたものを抑えきれなくなった。彼への想い。本当に告げたかった私の想い。
私は泣いていた。こんなに心が痛いなんて……
こんなに彼のことが……好きだったなんて……

2007年5月3日木曜日

長編11

「ルービックキューブ」


あーでもない。こーでもない。俺は脳細胞をフル動員して考えていた。
何をかって?大したもんじゃない一時期流行った「ルービックキューブ」って奴だ。
昨日の夜引き出しの奥から転がり出てきて懐かしさの余り始めたんだが一向に完成しない。
今日も一番乗りで部室に来て弄ってる訳だ。
こういうのも頭のよさが関係するのかと軽く凹まされていると・・・。
背後に気配・・・。長門か。驚かせるなよ・・・。
長門は興味深そうに俺の手の中の立方体を見つめていた。俺は簡単にルールを教えてやった。「・・・。理解。極めて原始的だが理論も含まれている」
そう言って俺の手からキューブを奪うと・・・。
暫く考えた様子だったがやがて俺の手を動かす速度の三倍速ぐらいで回し始めた。
呆気に取られていると・・・。「・・・。完成・・・。少し手こずったが許容範囲」
涼しげに俺に差し出す。インチキとかしてませんよね・・・?
「・・・。そんなことをしなくても十分に出来る。貴方にもやり方を教える」
そう言って俺は手ほどきされながら解き方を教わった。長門の手って柔らかいんだな・・・。
理解するまでは結構かかったが長門は詳しく優しく教えてくれた。
教師とか向いてるんじゃないか?って思ったぐらいだ。
やっと自力で解けるようになった頃にはもう夕方だった。
「助かったぜ。ありがとうな長門」
「・・・別にいい・・・」どこか嬉しそうに見えたのは俺の気のせいだったのかな。
部室を二人で出ると・・・。鬼の顔をした団長が居た。
「随分とお楽しみだったようね・・・」天国の後に地獄あり。俺はそれを噛み締めた。

2007年4月22日日曜日

長編10

「彼女のわがまま」


「明日は皆でお花見ハイキングよ!」
頭の中に年中満開の桜が咲いているのではないか?
と疑いたくなる女。涼宮ハルヒは叫んだ。コイツが言い出したら最後必ず従わなければならない。
まぁ季節がら悪くも無いだろう・・・。それに朝比奈さんのお弁当を食べられるやもしれん。
それならば多少の苦労はしてやるさ・・・。こうして週末に山登り+お花見が実行に移された・・・。
駅前に集合時間の十五分前には着いたはずなのだがやはり俺が最下位であり、
最寄の駅までの切符代を支払う羽目になった。いい加減財布がきついんだがな・・・。
電車に揺られる事数駅。ここからは歩きだな。
・・・・・・。目的の山。登山口は二つあった。
「ここでくじ引きよ! 二つに分かれて昇りましょう! 行きと帰りは同じグループだけど反対の道から帰ることで山の風景を全て楽しむのよ!」
よく分からない理論だが反論しても聞く耳を持つ奴じゃない。
俺は心から願った。ハルヒとペアにだけはなりたくない。
古泉?言うまでも無いだろう?
結果。俺は長門とペアになった。
長門のほうを見ると・・・。「・・・・・・」いつもの三転リーダーだ。
山登りする時でも制服なんだな。ハルヒは何処か不満げな表情だったが俺たちは二手に分かれ山を登りだした・・・。



山の中。決して険しくは無い。登校時のハイキングコースで慣れたせいか思ったよりも楽だ。
長門は俺の少し後ろを歩いて着いてきている。
コイツも疲れては居ないようだ。景色はというと所々に咲いている桜が美しい。
頂上はもっときれいなんだろうな・・・。そんな事を考えていると・・・。
後ろで人の倒れる音。振り返ると長門が倒れていた。
「長門! 大丈夫か!」慌てて駆け寄る。
「・・・。迂闊。足を滑らせた・・・」
「足大丈夫か?歩けるのか?」
「・・・。足を捻ってしまった様・・・。貴方の力を借りたい。許可を」
・・・・・・。真っ直ぐに俺を見つめる漆黒の瞳・・・。
そんな目で見られたら断れないじゃないか・・・。
「具体的にはどうすればいいんだ? 背中は荷物があるぞ?」
長門は少し恥ずかしそうに言った。「・・・。俗に言うお姫様抱っこ・・・」
その発想は無かった。というかそんな事をしていいのか。
嫌では・・・ないんだろうな。俺は覚悟を決め長門を抱いた。
荷物の分の重みを含めてもそんなに重くは無い小柄な体・・・。
抱き心地はいい・・・。
・・・って何を考えているんだ!取りあえず長門を抱きしめ残りの山道を登った・・・。
想像はつくだろうが俺たちが頂上に着いた時にはハルヒ達は既に到着しており。
長門を抱いて登場した俺はハルヒに尋問された。
事情を説明したが何分長門が俺から降りると平気で歩いていたので弁解の余地なく殴られた。
長門さん足駄目だったんじゃないですか・・・?
その後は昼食タイムとなり絶景を眺めながら美味しい弁当に舌鼓を打った。
帰り際・・・。古泉がこう言った。「貴方の分の荷物をもって帰ってあげますよ。その方が長門さんも喜ぶでしょう」意味不明なことを言って俺から荷物を受け取ると不機嫌なままのハルヒ達と帰って行った。「長門。 歩けるんなら俺たちも帰ろ・・・」
長門は俺の目を見てこう言いやがった。
「帰りは・・・おんぶで・・・」
やれやれ・・・。古泉が言ったのはこういう事か・・・。
俺はわがままなお姫様に付き合うことにした。決して嫌じゃないしな。

長編9

「静止した闇の中で」
長門が夜に行き成り「会いたい」って電話してきた。
断る理由なんて無い。しかし夜に会いたい何ていわれると・・・。
おっと。妄想が走ってしまった。いかん。いかん。
取りあえず長門のマンションへと向かう。もう慣れたもので直に708号室の前だ。
「長門、入るぞー」「・・・入って」お言葉に甘えるとする。
玄関先で俺を向かえたのはいつもと同じ制服姿の長門だ。
ある意味落ち着く。コイツが下手に着飾ったりされた日には俺の理性がどうにかなってしまう。
取りあえず部屋に上がった俺。「用件は何だ? 何か事件か?」
万が一という事もある。予め心の準備は必要である。
「・・・。用件というほどの事ではない。貴方とゆっくりと話してみたい」
・・・・・・。つい良い方向へ考えてしまう・・・。ゆっくり話したい・・・。まるで恋人同士じゃないか。
悪く無いかもな・・・。って何を考えてるんだ。長門がそんな事を考えてるはず無いじゃないか・・・。
話したい。そう言った割には話題が無いのか長門からは話しかけてこない。
仕方なく俺から当たり障りの無い話題を振る。と、その時。部屋に暗闇が訪れた。
「停電か・・・」急な事に驚く俺。だが本当に驚くのはこれからだった・・・。



まず突然手に触れる優しい感触・・・。長門の手だ。小さくてだが確かな温もりを感じる・・・。
俺の手をぎゅっと握ってくる。ひょっとして怖いのだろうか?
「長門?」次には俺の肩に寄りかかってくる・・・。肩に感じる重み・・・。そしてほのかないい香り・・・
。だんだん理性がおかしくなってくる・・・。
「長門? 怖いのか? だんだん俺に近づいてきているようだが・・・」
だんだん暗闇に慣れ薄っすらと見えてきた。
・・・・・・。目の前に目を閉じた長門の顔があった。
ひょっとしてこれは・・・。「キスして」ですか?
いや、まてこんな暗闇に乗じて勢いだけでそんな事をしては・・・。
それより何で長門はさっきから黙っているんだ?俺に何をして欲しいんだ・・・。
俺と長門は暫く見つめ合い・・・(長門は目を閉じているが)
どのくらいそうしていただろうか。暗い部屋で密着。
目の前で目を瞑り待ち続け一言も話さない長門。
俺の精神はもう限界に近かった・・・。
突然目に差し込む光・・・。思わず目を閉じてしまった。・・・・・。
明るさになれ目を開けると・・・。長門は元の位置に戻っていた。
・・・・・・。何処か怒っているように見えるのは気のせいだろうか?
時計を見るともういい時間だった。「悪い、長門。 そろそろ帰らないと・・・。今度またゆっくり話そう」「・・・。そう。気をつけて」
俺は長門に見送られマンションを後にした・・・。








結果。
作戦は失敗に終わった。二人きりの状況を作り出し意図的に停電を起こす。
その状況で徐々に近づき目の前に迫る。それでも彼は何もしなかった。
何も出来なかったのかは分らない。
結論。
彼は思ったより意気地なし・・・。
ちょっと残念。今度はもっと上手くやってみよう。

2007年4月20日金曜日

短編(3)二本セット

短編 「俺の大切な・・・」


長門には制服が良く似合っていると思う。
というより制服を着ている事が多いからそのイメージが強いんだろうな。
長門は無表情で言ったっけかな「最初から私しか居ない」
でもな、これからは俺達、いや俺がついてる。
だからお前はもう一人じゃないんだ・・・。
お前は感情を表す事とかしないけど悲しい時は悲しいって言えばいいんだぜ。
俺が側にいてやるからな。感情を表す事は悪い事なんかじゃない。
お前が人間らしくなるために必要な事なんだ・・・。
お前が一人で見ていた夕焼け。これからは俺と一緒に見よう。
「嬉しい時どうすればいいか分らない」嬉しい時は笑えばいいんだぜ。
無表情のお前なりに「笑う」事だって出来るはずさ。
お前はまだ感情を現す事が出来ないだけなんだ。
きっといつか人間らしくなれる時が来るさ。
だから長門。俺と一緒に陽だまりで過ごそう。
俺はずっと側にいるから・・・

短編 「三年前のあの日より」


訪れる出逢いの時・・・。
観察対象涼宮ハルヒとの接触は明日。明日からはより正確な情報を観測する必要がある。
なのに私の中で一つのエラー・・・。彼の存在が気になっている。
彼が鍵だから?三年前から出逢う事は分っていた。
そして待機モードでありながら彼のことを忘れることは無かった。
・・・・・・。何故?どうして彼が気になるの?
このエラーは積み重なりあるとき爆発してしまう・・・。
今の私には分らない。明日から涼宮ハルヒ。そして彼と。
共に過ごす事でその何かが分るのだろうか。
気付いてしまった事は三年前から彼にまた会いたかったこと・・・。
彼は何も知らず私に会うのだろう。私は彼に気に入られるだろうか?
・・・・・・。またエラー・・・。
・・・・・・。大丈夫。思考回路に問題なし。
明日に備え今日は休もう。答えはきっと未来に・・・。

2007年4月19日木曜日

長編8

「Snow Smile」

ある寒い日の事だ。俺は決して口数は多く無い文学系少女・・・。
正体は有機生命体云々なのだがそんな事はもう忘れそうなくらい普通の女の子。
長門と冬の道を歩いていた。
・・・・・・。沈黙。だがそれが心地よく感じるのは何故だろうな?
ハルヒや朝比奈さんと居る時には感じられない気持ちが長門と居る時にはある。
ふと気付くと長門が手を寒そうにしていた。手袋もしていなかった。
俺は少し恥ずかしい事を思いついたが思い切って口にしてみた。
「長門。手寒いだろ? 俺の右ポケットに入れていいぞ」
長門は・・・。僅かばかり頷くと俺のコートの右ポケットにそっと手を入れてきた。
長門の小さな手と俺の手がポケットの中で触れ合う。胸の鼓動が伝わってくる・・・。
そんな気にさえなる。俺はふと思った。
見渡す限りの白銀の世界。そこを二人で並んで歩き二人だけの足跡を印す。
とてもロマンティックな光景だと思う・・・。だが生憎雪は積もっていない。
その時長門が初めて口を開いた。
「・・・。雪が積もらなくてもいい・・・。今こうして貴方と居られるだけで私は幸せ・・・」
ああ。そうだな。夢物語なんて叶わなくても今こうしていられる事。
それだけで幸せだよな。
「貴方に出会えて本当に良かった・・・」ああ。俺も同感だぜ。
長門に会えた事で俺は本当の幸せってのを知ったんだからな。
俺たちはお互いの絆を確かめ合いながら雪の無い道を歩いていた・・・。